2022-1-22 日記 悪なき殺人

「悪なき殺人」を観た。

観ようと思ったのは、原題「ONLY THE ANIMALS」と、キネマ旬報に掲載された児玉美月さんの評に惹かれたからです。

 

 

以下、感想!

 

このタイトルが設定された理由を明かしたいと思いながら観ていた。

まず、「ONLY THE ANIMALS」の訳「動物だけが知っている」について。

ミシェルが"アマンディーヌ"とやり取りするのはパソコンの画面越しに限られる。送り合うメッセージの内容は2人しか知る由もない。だが、ミシェルのパソコンの壁紙が牛舎に設定されていることで、2人の会話が画面に映る時は必ず牛たちの姿も現れる。内密なはずの2人の関係は、疑似的に牛たちによって見られていると言えるだろう。

また、ミシェルがエヴリーヌを絞殺する瞬間を目撃したエヴリーヌの飼い犬や、ミシェルがアフリカに向かう前に視線を感じた先にいる牛たちというように、人間の隠したい行動を動物の視線が捉える。

これは「動物だけが知っている」という原題訳を支える要素と言えるのではないか。

 

動物の視線と言えば!

冒頭、男に背負われながらサルー師の部屋に入っていくヤギの瞳のクローズアップがありましたね。あのヤギは何?あの男は誰?(調べているとロレックスというらしいですね、まったく覚えていなかった)

あの姿勢は、ポスターにもなっているジョゼフがエヴリーヌを背負う姿と重なりますねえ。

 

次に「ONLY THE ANIMALS」について。

画面越しの"アマンディーヌ"に魅了されて言われるがままにお金を差し出すミシェルが「カモ」、ミシェルと同じく詐欺に遭いパソコンの前で自慰行為をする男性が「シカ」のようだと形容されるように、人間自体が動物的に描かれてもいる。

愛を求め、欲を満たそうとする人間もまた理性を失った動物のようであり、その意味で作品に登場するのは「ONLY THE ANIMALS」(動物だけ)、ということなのかな。なのかな?!