2022-3-11 日記 ポゼッサー 感想 境界線など

さて、書き始めたはいいものの、実は何にも分かってないです。だけど分からないなりにも何かを書きたいので書いています。

 

possessor2022.com

とりあえず公式サイトを見て頭の中を整理する。

「全世界が言葉を失った、戦慄のSFノワール。」というコピーがあるけど、鑑賞直後の私はまさにこの状態になっていました。

鑑賞後にレーティング(しかもR18)がかかっていることを知ったので、過激なシーンへの覚悟が全くできていなかったことも「無」の感情になった1つの要因だと思う。

 

あと、音楽がすごく良かった。過激なシーンは怖くて見れないなという方がいたら、是非音楽だけでも聞いてほしい。すっごい気味が悪いので!!!おすすめ!!!

サントラがApple Musicで配信されてます。

Possessor

Possessor



 

 

〈内容に触れます〉

 

 

 

 

 

 

一番最初のカットは男性が頭頂部に棒を突き刺すシーンで、血がドクドク溢れていた。ここで(ああ、この映画は血をしっかり見せてくるタイプなのね)と思ったら、そんな理解では到底済ませられないほど血が映っていた。映画館の大画面が4回くらい「血の海」状態になってた。血は超リアルで粘り気があった。

 

血に関連したところで言えば、人格を乗っ取ったタシャが最初に出てきた女性(名前分からない)やテイトの身体でターゲットを刺殺するシーンが何度もある。タシャは繰り返し繰り返しターゲットに刃物を突き刺すが、カメラはタシャの姿を捉え続け、そこから観客の眼差しを逸らすことを許さない。

生者が体内に刃物という異物を何度も迎え入れることによって、死者へと変化していく様を映し続ける。生きようとする力の強さを感じた、結局死んだ姿が映るのに。変なの。

 

 

『ポゼッサー』において、刃物で刺される人間は一撃で死ぬことはあまり無く、何度も刺されるうちに「いつの間にか」死んでいる。

この生から死へのシームレスな変化、でありながら前と後では全く違ったものになる変化こそが本作では重要なのではないかと思う。

 

トランスフォーム状態から「離脱」するためにはホストを殺す必要がある。「離脱」の方法としてタシャは拳銃自殺を指示されるが、タシャは何度試みても拳銃の引き金を引くことは出来ない。

冒頭で刺殺によって殺人を遂行しホストから離脱しようとするタシャは、銃口を自分の口の中に向けるところまでは出来るものの、その引き金を引くことは出来ない(到着した警察によって拳銃で撃たれることで「離脱」は完了する)。

一見、タシャの姿は自殺を躊躇しているようだった。しかしタシャは他者の体にトランスフォームしているため、タシャが拳銃を向ける相手はタシャ自身ではなく他者である。厳密に言うと「自」殺ではない。

 

ホストの体をうまく使いこなして指令を完遂するためには他者と自己の境界が曖昧になる感覚が必要だとすれば、タシャがガーダーに仕事ぶりを買われていることは納得できる。

 

生と死、他者と自己という2つの違うはずのものの境界線が薄れていく(ただし境界は決して消えはしない)ということを描いている気がする!

 

 

 

・物語後半ではトランスフォームしているヴォスの意識が薄れ、テイトの意識がテイトの身体を使ってタシャの夫マイケルを刺殺シーンもあった(勘違いじゃなければ)。ここら辺は理解が全くできていない。

 

・タシャとテイトが同期した直後に出るタイトル『POSSESSOR』めちゃくちゃかっこいい。Eを起点とした左右対称の文字列。

 

・匂いが安心するものとして描かれていた。

ガーダーがハンドクリームを手に塗って嗅いでホッとした様子を見せたり、テイトが婚約者(エヴァ)の匂いを嗅いで良い匂いだと言っていたり。

・それに対して、視覚と聴覚は不安定で不快、まさに「不安」を増長させるものだった。

タシャとテイトの意識の混濁はコマ送りにされてフラッシュを多用した映像で表現されるし、タシャがテイトを通じて見る世界に揺らぎが生じると羽音みたいなものが聞こえる。