2022-1-16 日記 ドライブ・マイ・カー

木曜日、図書館へ本を返却しに行ったついでに『キネマ旬報』2021年12月下旬号の星取評を読んでいると、『明け方の若者たち』について服部香穂里氏がこのように評価していた。

始まる時点で終わりを視野に、流れる歳月を描く恋愛劇が続く。制約なしでは男女の情愛さえ成立させづらい、不自由な息苦しさを覚える時代の反映か

 

・・・

話は変わりまして金曜日、気分転換に映画を観てきたんです。『ドライブ・マイ・カー』を1人で。雪の影響で公共交通機関が遅れ、上映開始時刻の15分後に映画館の受付に着いた。「ドライブマイカー、まだ入れますか?」と聞いたらあと1席のみ残っていた。空いていたのは1列目の右から3席目くらい。混んでいるかなとは思っていたものの、まさか満席とは!
お客さんの笑い声や鼻水を啜る音が聞こえてくるような映画だった。

 

以下、感想だ!

 

韓国でみさきが付けていたマスクが多分お揃いだったので少し嬉しかった。このシーンはきっと映画オリジナルだろう。コロナ禍の世界に生きるみさきを描くことは、みさきと同じコロナ禍を生きる私たちもまたみさきのような悲しみを抱えて生きていくことを示していて、今まで画面の向こう側の世界にあった感情が急に自分事として迫ってくる。

コロナを描くか描かないかは、マスクを着けるか着けないかの衣装合わせの問題でした。結果的に着けることにしましたが、たった一つのことだけど、大きなことだったのは間違いない。着けた方が今の心持に合ったと思うんです。そうすることで自分たちが生きている世界と同じ世界ということになるし、最後にみさきは非常に晴れ晴れとした表情をしているけれど、世界の厳しさは当然あるという状況。それはそのようにしました。(濱口竜介


ただ、ラストに映るのが一貫して物語の中心にいた家福ではなくみさきだったのは何故だろう。運転手として旅を、家福が音と音の死に向き合う物語を進めていたのはみさきだったから?ラストに現れる(そうだった気がする)タイトル「ドライブ・マイ・カー」を見てそう感じた。

家福の手掛けた舞台をラストシーンにすることもできたのですが、それだとサークルが閉じる印象があった。それを突き抜けていくラストにしたいと思った。(濱口竜介


この作品は言葉の物語であると思うけれど、最後にみさきが犬と暮らしている描写を入れたことは、言葉によらない関係性の構築を匂わせている気がする。「犬と暮らす」「みさきの母は自身の中に別人格を抱えていた」という2点から、どうしても小説「チョコリエッタ」を想起してしまう。

 

高槻の描かれ方が中途半端だと思ってしまった。ただの喧嘩っ早いヤリチン?「社会人としてはよろしくないけど役者としては大成するよ」というような家福の高槻への言葉は、芸能世界の異常さを感じる。

家福は演出家なので、稽古がどのようなところにたどり着くかはある程度見えています。彼は仕事場ではよく見てよく聞く人間なんですが、プライベートではそうではなかった。そのことを家福に気づかせるのが、プライベートとパブリックをつないでいる高槻耕史(岡田将生)という人間だったと思います。(濱口竜介

高槻が家福に音の語った物語を伝えるシーンがめちゃくちゃ良かった…。Twitterの人が「岡田将生すごい…」と言っていたのはこのせいだったのか。カメラを直視するカットが強烈で、話を聞くことしかできない、語りを止めることができない家福と同じ感情にさせられた。

事故を起こした高槻が映るシーン、アクサダイレクトのcmみたいてちょっとウケた。

 

家福、みさき、手話を使う夫婦(名前忘れてしまった)の間で行われるコミュニケーションの中で、過度に相手を慮ろうとするセリフが何度も出てくることが気になった。慮るというより遠慮→受け入れの姿勢?例えば車内で待っていてくれという時、カセットテープを再生する時、ご飯をご馳走になる時など…。「その気持ちさえあってくれたらそれでいい」というニュアンスの家福の言葉があった気がする。

うまく言えないけど、相手の気持ちを分かった上で要望を伝える=コミュニケートをするのは、舞台稽古で女優が言っていた、また家福が劇の全てのセリフを覚えているように「相手のセリフを頭に入れることで初めて自分の本当の気持ちが生まれる」という対話の手続きと通ずるものがあるように感じる。

 

広島から北海道へ行く時、見覚えのある道を通っていて身を乗り出しちゃった。コメリに着く前。

ごみ収集所に行った後の海でのロングショットが最高だった。

家福の亡くなった娘とみさきが同い年なことが早々に明かされることで2人が恋愛関係にならないと分かり、安心して観れた。

物語を生むために行われる家福と音のセックスは、最初こそ受け入れがたかったがなんだか納得できる気がする。

 

音が家福との結婚を唯一ためらった理由が「結婚した場合「家福音」になること」だったので、非常に日本的な理由だと思ったし、その悩みが深刻でなかったとしても、結婚する上で女性にとって少なからず障壁が存在している今の日本社会が嫌になった。村上春樹(もしくは濱口竜介)がこのシーンを挿入した意図を知りたい。

 

韓国語手話を見るうちに聞こえるはずのない声を感じるようになり、この人は語っていると思えるようになった。

タバコのシーンもいっぱいあったね〜良かった。時にその煙は妻音の浮気現場を目撃した家福の大きなため息にも、みさきが生家で母を想う弔いの煙にもなるのですね。

 

引用元:今夏のカンヌで日本映画史上初の脚本賞ほか4冠に輝いた、村上春樹原作「ドライブ・マイ・カー」8/20(金)公開 | 朝日ファミリーデジタル

バブ記念日

 赤ちゃんの決まり文句のような、2つの破裂音で構成されている入浴剤「バブ」。存在は知っていたが、普段湯船につかる習慣がないこともあって、使用したことがなかった。

 友人と気兼ねなく会って話せるようになったときに、この自粛期間中のネタを作っておきたいなと思い、初めてバブ、使ってみました。パッケージの後ろに「完全に溶け切ってから浸かってください」みたいなことが書いてあったが、CMでよく見る「1色に塗りつぶされた人間が、炭酸泡を吹くバブと一緒に湯船につかる」様子*1を再現したかったので、私がお湯に入るのと同時にバブも入れた。

 

 

f:id:sankaku-catchball:20200522074406p:plain

らしいです。 https://www.kao.co.jp/bub/faq/

 

 バブってなかなか溶けきらないんですね。結構息が長かった。手のひらにバブを乗せると、炭酸を発しながら溶けていくバブの振動が伝わってきて、バブの鼓動を手に感じているような気がして、とても愛おしい気持ちになった。手を放すとバブが浴槽に沈んでいく。

 普段しないストレッチをする。湯船につかっていると、スマホも本も持ち込めないこの時間をなにか有意義なものに変換しなければいけない!という思いが強くなって、体を動かしてみたりする。

 

 不意に膝の裏にこしょばさを感じてのぞき込んでみると、そこには少し小さくなったバブが。傍らに置いたバブは、鼓動によって浴槽の床をゆっくりと移動して、すこし曲げていた膝の裏にまでやってきたのだった。愛おしい。思わず微笑んだ。

 

 家でずっと1人で過ごしていると「偶然」とか「突然」に遭遇しなくなる。身の回りで起こることのほぼすべてが、自分の意思をもとにした行動の産物になる。外部とつながっているときは、「偶然」サークル辞めた同期の女の子と会うこともあるし「突然」友達がくしゃみをしたりする。でも1人でいるときはそういうことはなかなか起きない。霊と同居してるとしたら話は変わってくるが「突然」テレビが点くこともないし、「偶然」窓が開いていることもない。

*1:調べたがヒットしなかった。私の頭の中にだけあるCMの記憶か?

備忘録 加賀一人日帰り観光

09:03 アラームの音で目を覚ます。ここ最近12時に起きていたのでまさかこんな朝早くに起きられるとは思っておらず、自分を褒めた。カーテンを開けると雪が降ってて窓の外が真っ白だった。3月中旬なのに。笑った。

11:00 金沢駅着。電車内で読む本が家になかったので、うつのみやで買う。シューマッハの『禁忌』。カフカの『変身』を読み終えたばかりで、ドイツ文学かっこいいな期に突入している。でも他人の前で読んでいるときに表紙を見られ、「こいつかっこつけてんな」と思われるのが嫌なので、ブックカバーを付けてもらった。私には自意識過剰なところがある。

11:28 社内で食べるためにメロンパンとチョコとお茶を買って、普通列車に乗る。人が多い。なんとか女子高生と相席で座れはしたが、メロンパンを食べて良い状況ではなかったのでカバンに眠らせておく。座席下の暖房がメチャクチャ暑かった。タイツ越しの熱が皮膚を焼かすくらいの勢いだった。寝不足のため眠くなる。私服の女子中?高?生が3,4人でわいわいしゃべってた。「イオン行く?」って言ってた。いかにも地方都市の子供らしい発言だな、とほのぼのして(内心ちょっと下に見て)いたが、自分の地元にはイオンすらもないことに気付いた。彼女たちは小松で降りて行った。イオンは小松にあるのか。

12:19 加賀温泉駅着。カップルが多い!!カプルが多い。バスを待っていたカップル。彼氏が「今いるバス停に望みのバスは来ない、本来はあっちにいるべきらしい」ことを彼女に伝えると、彼女は「まじで?まじで?やばいやん!!ww」と言いながら、荷物も置いてピューっとあっちに行ってしまった。彼氏は彼女が置いていったキャリーケースやカバンを持って追いかけていく。「くいもん屋ふるさと」に行くと私の前に3名のグループと12名のサークル大学生っぽい連中が名前を書いて待っていた。11時開店で12時過ぎに着てもこれとは、そうとう人気な店らしい。こういう人気店に「○○○○ 1名」と書くのは申し訳なくなる。だけど書く。この店の加賀パフェを食べるために今回の旅行を組んだといっても過言ではないからだ。

12:40 呼ばれてカウンター席に着く。名前を書いた時に感じた罪悪感が薄れる。メニューをとりあえず全部見ていると、なめろう丼がメチャクチャ美味しそうな顔をしてきたので頼んだ。美味しい!!!!初めて食べた。今後居酒屋にあったときは積極的に頼んでいきたい。加賀着即パフェのよていだったのに、がっつりご飯ものを食べたため胃が驚いている。トイレで胃を落ち着かせてから、よし、これからが本番だ。加賀パフェ1つお願いします。店員さんが少々驚いた顔をしてた気がする。このパフェにはお酒が含まれているので同意書を書かないといけないらしい。書かせるのを店員さんが忘れていたのか、結局退店するまで書くことはなかった。先に付属品の加賀棒茶と甘酒ソースが運ばれる。主役が不在のまま5~10分くらいたった。主役を待つ私の視点の先を見て、店員さんが「ヤベ」という雰囲気を出した後、主役が運ばれてきた。想像以上にデカい。食いきれるのかと心配になる。そもそも最近パフェを食べていなかったため、パフェのモリモリした感じにびっくりしてしまった。想像以上に日本酒!すごい、パフェから酒の匂いと味がするのが未体験すぎて脳が驚いている。日本酒ロールケーキ美味しかったな。底にある日本酒ゼリーが1番酒感強かった。パフェを食っていると、サークル団体が退店しようとしていたのだけれど、なんと一人一人お会計をしていた。店員さん、連続して12回も現計キー押してレシート渡さなあかんなんて大変だな。知り合いのキレやすい複合型カフェ店員がこんな目に遭ったらブチギレるだろうな、とも思う。

14:?? 店を出た瞬間に目当てのバスが停車しているのを見て、ダッシュ。ゆったりのんびり加賀一人旅でまさか走ることになるとは。右後ろの二人掛けの席に座る。序盤は大きなドラッグストアとほっかほっか亭が見えたことしか記憶にない。しばらくすると住宅街に入り、ほどなくして温泉街(旅館街)に入る。こうやって一人で知らない土地を走るバスに乗り、車窓の風景をただ眺めているなんて、なんて贅沢な時間なんだろう。

15:24 山中温泉着。鶴仙渓遊歩道をひたすら歩く。美しい風景やハッと思わせられた川の流れをスマホに収める。少しでも映画製作(かっこつけんな)の手掛かりになればと思い、動画や写真を撮りまくる。途中で一人の男性に話しかけられた。川を歩いている目線で30秒くらい動画を回していたら、一人の男性に変な目で見られた。川の囂々と流れる音や、しとしと落ちる水をじっと眺めてたら、それに吸い込まれそうになった。道幅がとても狭い。右側の川と左側の土壁が、その間を歩く私にどんどん迫りくる。気を抜いたらどちらかの世界に触れてしまいそうになる。私に

 

 

 

書き加えるのを忘れていました。仕方がないので公開します。

 

 

はるやすみ

新歓のビラ配りのあと、サークルの先輩・同期とキャッチボール。

だだっ広くて人気の無い大学の荒れた運動場。目を細めさせる逆光の中、言葉少なにキャッチボールをするのは大変心地良い。今思い出してもここちよい。

夕食にと予定していた二郎系ラーメンを提供する店が開店前だったので、ビリヤードをして時間をつぶすことに。店内には猫が一匹。名前は忘れた。毛の短い猫だった。今度、「ネコチャンがいれば何もいらない」が口癖の友人と行きたい。

開店時間になったので店に向かうと、長蛇の列が目に入る。先輩によると、二郎系ラーメンはインスタ映えするらしい。ほんとうか?

ラーメンは諦めて、チャンピオンカレーに。おいしい。カレーライス。

寝坊してビラ配りの集合時間に遅れたことを除けば、素晴らしい一日であった。